オタクの『基礎教養』とはどこまでなのか?をDAICONアニメ見ながら考えた

ウラシマ効果でも受けてたのか?
っていうレベルの言及の遅さですが、今年の初めにこんな記事がありました。
20代のアニメ業界人が劇場版「銀河鉄道999」を誰も見ていないという衝撃 - ぬるヲタが斬る -

変態的な動きの金田プロミネンスは必見だよめーてるー


この記事を読むと色々なことに考えが及びますが、
ぼくが特に気になったのは
「アニメを語るさいには、どこまでの知識をフォローすれば合格なんだろうか?」
ということです。


この話題はオタク界における永遠の命題のような気もします。
アニメ編集者、アニメスタッフのようなアニメ業界人の方々のみならず、
「オタクたるもの、一家言を持ちたい!」
ヌルいオタクと言われたくない!」「あの人に勝ちたい!
などなど誰と戦ってんのかわからない高意識オタクの皆さんにも(皆さんにこそ)深く関わるものだと思います。

勝ちたいんや!


ただ具体的に深度(どの時代まで遡るか)や範囲(同時代のどのジャンルまでカバーするか)
を語り始めたり、個々の事例を検討
(例えばアニメ監督と市井のオタクのカバーすべき範囲は違うのではないかとか)
し始めると大変なことになりますし、
ぶっちゃけるとここまでの話題はただのフリ*1なのでさっさと本題に入りたいと思います。

本題

今回はこのようなオタクの基礎教養問題では真っ先に弾かれそう
DAICONアニメの重箱の隅について語りたいと思います。


DAICON FILM - Wikipedia
DAICON FILMダイコンフィルム)は、1981年から1985年にかけて活動したアニメ・特撮を中心とする自主映画の制作集団。アニメ制作会社ガイナックスの母体となった。…
『DAICON4オープニングアニメ』には、アニメ制作会社アートランドに所属していた板野一郎平野俊弘、垣野内成美らプロのアニメーターが協力した。また、赤井孝美と同郷だった前田真宏、前田の大学の先輩である貞本義行DAICON FILMに合流、ここで後のガイナックス中核となるメンバーが揃っている。


はい、まあそういうわけで、エヴァグレンラガンで有名なガイナックス
スタッフの皆さんが学生時代に作った超絶クオリティの自主制作アニメが
『DAICONアニメ』というわけなんですね。
すいません、知ってる方前提の記事なので説明が超おざなりです。


実はぼくも前述の記事での近藤氏と同じく*2
「いいものは見てほしいけど残るんだろうか、無理に見せてもだめだし、
残す努力が必要なんだろうか?」
みたいな観点でDAICONアニメをボケーッと見ていたのですよ!!!


そういうわけで
この場を借りて訪問者の皆さんにDAICONアニメを中心としたオタ教養を強化していただくため、
「オタク基礎教養の強化に最適!DAICONアニメ豆知識!」
みたいな記事を書こうとしたのですが、
映像に登場するキャラクターの物量に圧倒されてしまい
光の速さで挫折しました。
ええ、圧倒されましたとも。
それはもうびっくりどっきりメカを乱発し始めた頃のジオン軍のような絶望感でしたよ。






圧倒的じゃないか・・・(敵軍が)


まあなんにせよDAICONオタクエリート達を舐めてました。ぼくの負けです。
というわけで、今回の記事は
エヴァ庵野カントクつながりでDAICON見て、すげえのはわかったけど
出てくるキャラクターが全然わかんねぇ」
みたいな理由で基礎教養を求める若い方向けの情報提供の場プラス、
こんな記事書いたくせに未解読部分残しまくりなブログ主への
ベテランオタク様による教養指導の場の意味も持つという
まことにインタラクティブな方向性となっております。
実にごまかすのがうまい


ちなみに、この記事を書いてる途中で届いたオタキング様の本を読んでみたら
言いたいことが全部書いてあったので、
今回の記事はオタキング様の本で言及されていないところを狙って書くことにします。
オタキングの本と、このブログを合わせて読めばDAICONアニメの謎は全部解明さ!
誰が喜ぶんだそれ

世紀の大怪獣!!オカダ―岡田斗司夫のお蔵出し

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この本です

レベル1

しれっとDAICON4アニメの画像だけを貼っておりますが、
DAICON3アニメについては映像スピードが穏やかかつ、画面密度も控えめであり
検証を要するほどではないと考えて豪快にオミットしております。すいません。


さて、DAICON4アニメの前半は比較的検証の難易度が低く、
後半になるほど難易度と密度が上がっていくという
親切な仕様になってます。
ですんで前半部はぬるいブログ主でもキャラクターの出自がわかるのですが、
その中でもわかりにくそうなものをピックアップしてみます。

モビルスーツウルトラ怪獣(左)は有名どころが揃ってます。
女の子に投げ飛ばされるロボット(右)はダイナマンダイナロボ。
で、エイリアン(中央)は皆さんご存知のギーガーのエイリアンなんですが、
彼に関してはネタ元とは別の意味でいろいろ謎があります。
まず徒手空拳で最強のはずなのになんか得物持ってます。
これは「2001年宇宙の旅」のディスカバリー号だそうです。
なぜディスカバリー号なのか・・はいいです。ノリだと思います。
それよりもなぜディスカバリー号を地面に突き立てると爆発するんでしょう。爆薬筒ですか?
さらに、なぜ脚部アーマーらしきものを履いているのかもよくわかりません。情報希望。



女の子が飛び乗ってサーフィンする謎の剣(左)。
各所では、「エルリックサーガ」のストームブリンガー(右)だとか、エクスカリバー(作品名不明)だとか、
ロトの剣だとか色々言われてます。まあロトの剣は年代的にないでしょうが・・
とりあえずここではストームブリンガーであるということにしときます。
形状は似てると思います。ルーン文字は書いてないけど。



・・ちょっとオタク気圧が上がってきましたね。
左から、ヨーダをはじめとするスターウォーズのキャラクター達、
黄金バット」のナゾー様星新一氏のオリジナルキャラクター「ホシヅル」、
「宇宙人東京に現わる」のパイラ人、だそうです。
どれも確定でいいと思うんですが、一つだけわかりません。
ヨーダ師匠の落語をチューバッカの隣で聞いてるの(黄色枠内)はなんというキャラなんでしょう?
ダメだ!スターウォーズ民呼んでこい!って戦争ごっこっぽく叫んでも誰も来てくれないので困ってます。

レベル2


一回目のサビが始まるあたりでレベル2に入ります。
マクロスとかバルキリーとか出てきて賑やかですが、
ウルトラホークが編隊飛行してる下の地表がなんかアレ(左)です。
戦略ゲームのヘックスとダイスだそうです。
さらにマクロス超強攻型(公式)などなどが戦ってるシーンの背景が
なぜか喫茶店ですが、オタキングによればこれは
「喫茶店内でオタク達が馬鹿騒ぎ(=戦闘)
しているのを冷ややかに見つめる一般人」
の暗喩だそうです。
80年代のオタクさんは明るいイデオンとかトミノコ族とかいって
色々吹っ切れてるイメージがありましたけど、ちゃんとメタ視点もあったんですね!

シーンはファンタジーやSFの世界へ。
アレしてコレした画像なのでなんかもうブレブレですが、(左)はファンタジー作品の世界。
オタキングの本では

ユニコーン、グイン、コナン、白き竜の流れる「ファンタジーの世界」

となってますので、これに追加すると、左の画像にいるライオンさんは「ナルニア国物語」のアスラン


続いて、(右)画像のSF世界は

インターセプターやマーシャンズウォーマシン、TIEファイター、サンダーバード3号、
ミレニアムファルコンらが飛んでいく、「SFの世界」

これにもしつこく追加すると、黄色枠で囲ったメカは「スタートレック」のクリンゴン人のバトルクルーザー。



だいぶ難易度が上がってきました。このへんからこの記事はただの質問集になっていきますのであしからず。
このあたりの世界はオタキングによると

仮面ライダー流星号ゴモラジェットジャガーナウシカ鉄人28号
ジャイアントロボタッコングリン・ミンメイレミー島田、ラグ・ウラロ、
オーロラ姫、キューティーハニー、ダリー、マジンガーZ、長さん、ベガのいる
「アニメ・特撮・コミックの世界」

この説明を読んで
「へーオーロラ姫っていうのか!みなしごハッチあたりのキャラかと思ったー」
とか言いながら膝をバシバシ十六連打くらいしていたブログ主ですが、
ちょっと疑問もあります。
目を皿のようにして見たんですけど、レミー島田(『戦国魔神ゴーショーグン』)と
ラグ・ウラロ(『戦闘メカザブングル』)、ホントにいますかね?確認できず。
さらには情けないことに、この説明を与えられてもなおわかんないキャラが何人もいます。
(左)画像、ナウシカ王蟲の隣にいる不敵な笑顔のクモっぽいのは何なんでしょう?
(中央)画像、件のオーロラ姫の後ろにいる、ガンダム連邦軍制服っぽいのを着てるのは誰?
セイラさんじゃないし・・
(右)画像、右手前の黄色枠内、カチューシャをつけた茶髪の女の子
続いて、長さん(『童夢』)の後ろにいる、大友克洋っぽいアゴラインの女の子
いったい誰なんだ。気になって夜も眠れません。嘘です。


そして、オタキングに「失神しそう」と言わしめた伝説の庵野サーカスと庵野爆発が登場。
その直前にいくつか小ネタが挟まってます。

これも「今さら(略」と言われそうですが、一応。
ツイッターの有志にお聞きしたところ、モゲラと衝突しているのが
ジャガーバルカン(『太陽戦隊サンバルカン』)、サンダーバード5号を押しつぶしてるのが
大魔艦(『惑星大戦争』)だそうです。

都市が崩壊し、山が隆起する大スペクタクルを経て、さらに小ネタ。
(左)画像は左がロビー(『禁断の惑星』)で
右がヒューイ(または色違いのルーイ・デューイ)(『サイレントランニング』)。
(右)画像は『ダイナマン』のメギド王子と王女キメラだそうです。
また余計なことを言うようですが、
なんでメギドとキメラは仲良くおにぎりを食べてるんですかね?単なるギャップ狙いのパロディかな?

レベル100


ついに来ました、初見時は誰もが目テンになるであろうキャラクター引用の嵐。
これを初見ですべて把握できる人類がいるだろうか、いやいない(反語)。
「コマ送りは必須である」と評されたこのシーンですが
視聴資料がアレしてコレした動画のそれなり画質なためにコマ送りしてもわからなかった
のでオタキング様の本を引用(出展作品の記述を省略、キャラクター名のみ)。

ハカイダー、マリア、ペリー・ローダン、メタルナ・ミュータント、ポール星人、
火星人、ゴート、東丈、スペル星人ユル・ブリンナーロボット、ヨーダ
レプリカント仮面ライダー、X星人、(後略)

すいません、飽きました。
この後も大量のキャラクター出典の説明は続き、50ほどのキャラクター名が挙げられています。
気になる方は岡田氏の著作を買ってくださいということで・・・


このようなオタキングの親切な説明がありつつも、なお
「キャラクター名でググっても画像と一致しない」「そもそもググるのがめんどくさい
などの理由で不幸にも出自が突き止められなかったキャラクターを
挙げておきます。

「5」についてはツイッター民の方々のおかげで
フラットウッズモンスターではないか?」との答えを得られたのですが、
他の番号のキャラクターについてはサッパリです。情報きぼん!!

まとめ

さて、ここまで書いて思いついたんですけど、
DAICONアニメは当時としては「最新オタク知識の総決算」的な意味を持っており、
これは知っておかねば」もしくは「ここまで分かるか!?
といった、基礎教養の限界を探るかのような
作り手と受け手のせめぎ合いがあったんじゃないかなー、と。
現在となっては、
決して無視できない深度(1983年)と範囲(アニメ・漫画・特撮)にあるとはいえ、
「なぜわざわざ今語るねん」と言われてもしょうがない存在であるとは思いますが、
オタ教養の深度と範囲を探るせめぎ合いバトルの具現化例として
貴重なんではないかなと思います。
きみも「そんなマニアックなのしらねーよ!!!」と逆ギレしたり
○○出してきたか、これはスタッフ誉めざるを得ない」と上から目線したりして
オタ教養の限界点を感じてみないか!?


まあ冗談はさておきですね、
現在でも、この映像が誕生した文脈と映像自体の濃密さは、ガイナックスオタク、特撮オタク、オタク史オタク、自主制作アニメオタク(いるのか)、
などなど一部のオタク様にとっては必須の基礎教養でしょう。


ともかくこのオタクの基礎教養の深度と範囲の問題は
オタクであるかぎり、常につきまとう宿命のようなものなのだと思います、
と強引にまとめておしまい。

*1:毎度恒例のタイトル詐欺!!

*2:UST見てないのでアレですが←見ろ