八面体に向かって撃て

上映期間もそろそろ終わりという事で再見した
エヴァ新映画について、しつこく言及。
今回の映画は富野監督の言葉でいう「身体性」
の描写が若干強まり、それがセカイ系の始祖として悪名高い
エヴァの「セカイ」を広げているのではないか、
という思いつき(笑)。


自分の場合は、身体性というのをアニメの中での生活描写、
傷の痛みや恐怖といった現実と地続きの描写、というふうに
理解してます。
そういう描写がないアニメは、健全でないとお禿様は常々
言っておられる訳なんですね(笑)。
新映画でいえば、シャムシエルエヴァの腹を貫かれて
シンジ君が苦悶の表情を浮かべるところ。
一瞬のシーンですが、エヴァを通して伝わる痛みの表現に
一役買ってます。
旧シリーズの同シーンは、闘志のために痛みを意に介していない
ようにも見えましたが、この1カットで戦いの痛みがより強く
伝わるのではないかと。
そして、シンジ君が手の感触を確かめるシーン。
人に触れたり人を殴ったりといった
シーンのあとは必ず手をグーパーして何かを確かめようとするシンジ君。
どちらも旧シリーズからあった*1シーンですが、
連続して出てくるため、「あ、また手だ」という感じで、
手から伝わる体温や殴った痛みの印象は強くなってます。
そして、なんといっても、ネルフの整備班をはじめ、
畑にたたずむ人、ヤシマ作戦の動向を不安そうに見る人々、
人、人、人・・・
エヴァ世界にはこんなに人がいたのか!(笑)と思わせる、
モブキャラクターの登場数。
みんな、エヴァ世界の中で「生活」しているのです。
これだけ人が出てくると、もはやセカイ系とは言えないかもしれませんね。


このような描写によって、痛みやぬくもりの描写はありつつも、
どこか殺伐として冷たい画面であった
旧シリーズ1−6話*2に比べて、より一般的な作風のアニメ、
という印象になってます。
ただし、まるっきり普通のアニメになってしまったという
わけでもなくて、セカイ系のとがった要素を核に持ちながらも、
一般的エンタテイメントの方向へいくらかシフトした、という感じですね。


身体性の描写が今後の映画でも増えていくのかはわかりませんが、
全体的なイメージから考えるに、その可能性は高いと思います。
身体性を得て、健全になったエヴァなんてエヴァじゃねーよ、という
方もおられるでしょうけど、自分はこの変化を好意的にうけとめてます。
だって前より面白いんだもん(笑)。

*1:たぶん

*2:2話、食卓でのミサトのはしゃぎぶりさえ演技っていう世界ですから・・