キルラキルでやってる少年マンガ的バトルはオリジナルアニメにおいて大変貴重!・・かも


今回はうまい冗談が思いつかないので
いきなり本題ですこんにちは。


キルラキルを見ていて、バトルシーンに
少年マンガ的戦法」がちょこちょこ出てくるなーと感じてます。


序盤のバトルが基本的にパワーでゴリ押しだったので、
やっぱりオリジナルアニメはバトル描写を練り込む余裕がないのかなー、
バトル解説役も必要だし解説させるにも尺がいるし、
2クール以上のボリュームがあるマンガ原作もののようにはいかないのかなー」

なんて半ばあきらめながら見てたのですが、
ところがぎっちょん、四天王との対決あたりからイカス描写が出てきています。


まあ、本作は(半ば?)公式に「男塾」や「炎の転校生」など
往年の少年マンガや名作アニメのオマージュ作品であると
明言されてますので、「少年マンガ的戦法」が出てくるのは
当たり前なのかもしれませんけど。

少年マンガ的戦法」の定義

「そもそも少年マンガ的戦法って何やねん」とお思いの皆様、ご説明します。


  
なんかえらくピンポイントなとこを選んでしまった気もしますが、
左が「ダイの大冒険」のアバンストラッシュクロスで、
右が「ジョジョの奇妙な冒険」第2部にて、主人公の策謀により、
片腕を吹っ飛ばされてしまって泣いてるエシディシさんです。


ジョジョのほうは最近アニメにもなりましたし、説明はいらないんじゃないかと。
気づかれずに作戦を進めていた主人公の頭脳プレーみたいな感じです。
「ダイ」のほうも、
他に最強必殺技(ギガストラッシュ)があるにもかかわらず、
状況に対してより有効と判断した地味なこの技をあえて使い、敵の弱点を突いて頭脳プレーで勝利したのが印象的です*1


まとめると「少年マンガ的戦法」とは、
パワーや物量でゴリ押しするのではなく、「知恵で勝つ*2みたいなことですかね*3


で、少年マンガ(あるいは青年マンガ)が原作のアニメだと
当然のことながら原作の時点ですでにこういう「知恵で勝つ」バトル描写が
たくさんあるので、アニメでも知恵勝ちバトルはたくさん見られます。


一方で、原作なしのオリジナルアニメだと、
こういう知恵バトルがあんまりないような気がするんですよね・・


・・すいません、完全な印象論です。
ソースもクソもない思いつきでひどすぎるので、書き直します。


キルラキルのバトルは基本1対1であり、知恵勝ち要素も
わかりやすく描写してくれるので少年マンガのように楽しめる


うん、これなら矛盾は少なく叩かれることもないでしょう。

具体例

さて、毎度の神経症的エクスキューズが済んだところで具体例です。



第2話、テニス部とのバトルにて。
手持ちの武器に現地で改造を施して戦うというのがちょっと少年マンガっぽく、
もっと言うと富野アニメっぽい(後述)。
まあこれは戦法というよりは殺人テニスという一連のお笑いネタの一部のような気もしますが。



第6話、猿投山との初戦にて。
主人公が自らのバトルスーツ(神衣)を裂き、その破片をまとわりつかせて
猿投山の視覚を封じ、バトルに勝ちます。


 
第9話、蒲郡とのバトル。
外からではあらゆる攻撃を吸収してしまう蒲郡のバトルスーツに対し、
「肉斬骨断」ってな感じで
あえて捕らわれて自らのバトルスーツを変形させ、内部から粉砕する主人公。



第10話は知恵バトル満載でした。
Aパートでは、光学迷彩を駆使する敵に対し、主人公は
「どこにいるんだかわからねえなら闘技場丸ごと吹っ飛ばす」
どっかの霊界探偵みたいなことを言いながら
巨大に変型させたバトルスーツで敵を粉砕します。


 
Bパートでは、空を飛びまわる敵に対して自分は飛行能力がないというピンチに
スクランダー・・じゃなくてまたしてもバトルスーツを変形させ、
スーツの繊維で作ったワイヤーとアンカーボルトを使って
敵を空から引きずりおろします*4



さらには、場外リングアウト負けになりそうになると、
その場でバトルスーツを飛行形態に進化させて切り抜けるムチャクチャぶり。
「戦いの中で成長している!!」が売りの少年マンガの主人公たちも真っ青です。


まあ、最後のは知恵バトルというよりは
「身近な人の死でパワーアップ」に類するご都合展開のような気もしますし*5
他のものも全てバトルスーツの恩恵
本人の努力や事前の備えがあるわけでもないので説得力としては薄い*6のですが、
奇抜な戦法を繰り出す根源となる反体制で一本気な精神力こそがこの主人公の強さと考えれば
まあオリジナルアニメならかなりイケてるほうではないかと。


さらに、これ以後もちょくちょく知恵勝ち要素が登場してます。

左が15話、中央が20話、右が21話です。
15話ではバトルスーツからの出血を目つぶしとして使ってました。
20話ではマントを敵にからませて捕まえてましたね(結局ヌイには効かなかったけど)。
21話ではサツキ様自らオトリとなり、敵をおびき寄せて叩く!
という戦法を披露してくれました。

で、富野アニメ

こういう
オリジナルアニメで知恵バトルを豊富にやってくれるアニメといえば、
そう、富野監督のロボットアニメです。


まーた富野信者の説伏が始まったかとお嘆きの皆さん、
後半でもうちょっと一般的な話にまとめますのでどうかお静まりください。


まあ要するに
「ブログ主が知ってる範囲で、
キルラキルみたく原作なしのオリジナルアニメで、
バトルに知恵や機転がたくさんあってイケてるアニメ」
というのが富野アニメだったってことなんですけど*7


富野アニメといっても色々ありますが、
選ぶのがめんどくさい・・じゃなくて
有名で分かりやすいものとして、1stガンダムを取り上げます。

ランバラル戦より。盾を目くらましにして上空から奇襲というのが
少年マンガライクな決め技でナイスです。

ランバラル残存部隊とのバトルより。
防御と攻撃を同時にやる!というのも実に少年マンガ

シャアズゴック戦より、盾ごしに敵を狙い撃つシーン。
これ以外にも盾を投げつけたりとか、盾持ちのガンダム
伝統的にナイスなバトルを見せてくれますね。


あと、富野アニメのバトルについては
他ブログでも書いてる方がおられました。
勇者ライディーン3クール目の富野コンテ後編 36話はエヴァとラーゼフォンの元ネタ - 旧玖足手帖-日記帳-

太陽を背にして、上空に居て見えない敵に向かってミサイルを撃って、太陽の中から撃ち返されるというのが富野っぽいなー。

投げた岩をライディーンと間違えた敵が撃って、その隙に移動したライディーンがミサイルを背後から撃つってのが躍動的ですよね。

特徴的な戦法を使って襲ってくる敵というのもそうですし、
石などで陽動をかけるというのも定番ながらよいバトルのスパイスです。


このようにいくつか例を上げてみると、これらの演出というのは
単に少年マンガ的というよりは、
戦闘シーンを含むエンタメ全般に宿命づけられている
「バトルをマンネリ化させないスパイスの引き出し」
と呼ぶべきなんだろうなーと思えてきます。
そのような引き出しの中で、とくに
主人公の機転や知恵をよりどころとするものを
少年マンガ的と呼ぶべきかもしれません。


キルラキル少年マンガ的な要素として
知恵バトル友情でパワーアップ!をやってくれてるので
あとはリュウコちゃんの「努力」を示す秘密特訓のパートとかあればなー、
というのが惜しまれるんですが、
やはり尺が足りないんでしょうかね・・ないものねだりでしょうか。

まとめ

さて、オリジナルアニメにおける
知恵バトルのよいところをまとめると、

オリジナルアニメの知恵バトルは、原作つきアニメに比べて
先の展開が読めない分スリリングであり、
また尺の都合や作劇上の制約(少年マンガによくいる解説役を置けるような作風でない等)
により、冗長な説明や描写をしない(できない)
ことで、生粋の少年マンガ戦法とはまた違った爽快感が楽しめる。

というような感じでしょうか。
文字と絵でバトルを描写できる少年マンガや、
長大な話数でバトルを描写できる少年マンガ原作のアニメと比べると
展開が急だったり内容が薄かったりするのは否めませんが、
上記のような魅力もあると思います。


そういうわけで、富野アニメをはじめとした
オリジナルアニメのバトルでいいのがあったら是非お知らせください。


今回はまさかの投げっぱなし他力本願ジャーマンでオチます。

*1:画像のシーンとは違うような気も・・曖昧ですいません。

*2:ジョジョの話題なんかで「頭脳バトル」と呼ばれることもありますが、頭脳だとインテリっぽすぎるので、バカっぽい主人公にも適用できる「知恵」がいいんじゃないかと・・

*3:少年マンガのお約束というと「友情でパワーアップ」とか「身近な人の死でパワーアップ」とかあるので語弊がありそうですが、今回はこの定義で。

*4:画像がないんですが、ワイヤーは猿投山との初戦でもすでに使ってましたね。

*5:代償としてのちに暴走してるのでご都合すぎるというほどではないですが。

*6:少年マンガでいう特訓パートでも筋トレや模擬戦闘など物理的なものはなく、鮮血との問答で心を整理して「吹っ切れる」という精神論メインなのがちょっと残念。

*7:あとはあき○ん先生が富野アニメはキャラの強さの序列がはっきりしてて少年マンガっぽいと言ってたこともあり。

逆襲のシャアの戦闘シーンは具体的にどこがどうかっこいいのか言語化計画(長い)

毎度世間のオタクトレンドと隔絶した
マクー空間を形成している本ブログですが、
また性懲りもなく時期外れのネタです。
機動戦士ガンダム 逆襲のシャアです。
機動戦士ガンダム 逆襲のシャア [Blu-ray]


なぜ今、逆シャアなのか・・?
理由は特にありません。
シャアにも
「これはナンセンスだ!」と言われてしまいそうな時期の外れ方であります。


実は以前、ツイッター上で逆シャアがちょっと盛り上がったことがあったので
自分の中では逆シャアブームがちょっと再燃してるんですよね。心底どうでもいい
『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』OPの作画監督クレジットについて - Togetter


で、自分が逆シャアについて昔から気になっていることがあるんですけど、
それは
逆シャアの戦闘シーンはサイコーに素晴らしいのだが、
どこの語りを見てもいまいち言語化されてない」
ってことなんですよね。



「展開がスピーディー」「スピード感がある」「ロボット*1の動きがリアル」
などなどの表現はよく見るんですけど、いまいちはっきりしない。
具体的に、どこがどうだから、こんなにかっこいいのか?


我が教祖であるアニメ様はこう書いておられます。

戦闘シーンの描写については殺陣のつけかた段取りの組み方だけでなく、
敵味方のモビルスーツのギミックを次々に披露しながら、戦闘を進めていくのが見事だ。
モビルスーツが「よくできた便利な機械」である事を分かりやすく表現していると思う。

WEBアニメスタイル | アニメ様365日 第465回 アニメーションとしての『逆襲のシャア』


「殺陣と段取り」
さすがトーシロとは違います。表現が的確であられます。


このアニメ様の言葉にヒントを得て、
今回は逆シャアの戦闘シーンの素晴らしさを言語化すべく、
メリケン様のプレゼン手法をパクって3ポイントに分けて語っていきますよ。

(1)アクションが「殺陣」である

つまるところアニメ様の言われる
「殺陣と段取り」のパクリです。


(1)(2)(3)
例えば、このシーンでは
(1)アムロが中距離からビームを撃つ。
(2)シャアがビームを回避。
(3)その隙に、アムロが懐に入る。


という流れのアクションをしています。
(1)でアムロがビームを撃ったのは、
けん制しつつ距離を詰めるためです。
そのアクションが(2)(3)のシーンに繋がり、アムロ
見事にシャアの懐に入ることになります。
さらに(3)では、すでに次のシーンへのつながりが生まれます。
次の攻撃を繰り出すためのライフル射撃の妨害です。
この後、妨害を受けて一瞬の隙を見せた
シャアのライフルをアムロが破壊します。


このような一連の流れが時代劇を思わせる
逆シャア「殺陣」なわけです。
キャラの意図がにじみ出た細かいアクションが次々とつながり、
ひとまとまりの見せ場となっています。

余談ですが、上記のシーンのあとも「殺陣」は続き、
最終的につばぜり合いとなって、いったん区切りがつきます。
そして、その後はすかさず例のアレ。



「私、シャア・アズナブルが粛清しようというのだ、アムロ!」
「エゴだよそれは!」


富野アニメはなんでいつも戦闘中に議論するの?
という有名なイヤミがありますが、
逆シャアに至ってはその議論の仕方が限界まで洗練され、
もはや芸術美というしかない領域に達しています。
この「議論」が、
素晴らしい「殺陣」の合間にすかさず挿入されては、
富野フレーバーをまき散らしつつ、戦闘しながらも
ちゃっかりストーリーを進めていくという大変重要な役目を果たしており、
戦闘シーンだらけの逆シャアにはなくてはならない装置となってます。



ところで、同じサーベルのアクションでも、F91*2だとちょっと違って、
(1)(2)
(1)でサーベルを抜いたら、(2)で相手が切り捨てられて、
これははっきり2アクションに分かれてます。
逆シャアのような、牽制と本命攻撃を組み合わせた
複雑な殺陣はあまり見られません*3
このほうが視聴者としては一つ一つの出来事をじっくり追えるし
わかりやすいんでしょうけど、
逆シャアみたいな「乱暴なまでのスピード感」がない。(笑)
富野監督もF91では息切れしたのか、制作体制の不安定さのせいなのか・・
まあ、こういう演出のほうがアニメでは一般的だと思います。


もちろん、他のガンダムシリーズでも、ちょっと探してみれば
同じように殺陣マインドを感じさせるシーンは存在します。
というか、
ガンダム、あるいはロボットアニメというくくりに限らず、
バトルもののアニメを作るにあたって
見せ場のバトルで手の込んだ殺陣を組み立てる
というのは至極当たり前のことなのですが、
それにしたって逆シャアは2クール終わりの見せ場で出すような密度感の
殺陣がゴロゴロしてるのでやっぱり異常です。



(2)1シーンあたりでやってることが異常に多い

これはアニメ様の言われるところの
モビルスーツのギミックを次々に披露しながら、戦闘を進めていく」
と関連します。
ロボットをそのギミックを通してかっこよく見せるというのは
ロボットアニメの基本ではありますが、
逆シャアはそのスピードがとにかく速い、速すぎます。*4


これはたぶん、ビームサーベルなど
武装のマウント位置から、モビルスーツの基本的動きに至るまで
「ファンは以前の作品をふまえて見るだろう」という前提のもとにアクションが構築されているからなんだと思いますが、
このようなファン向けと割り切ったかのようなメカ描写の数々が
結果的に
ガンダムファンの目にも新鮮に映るハイスピード戦闘
を実現させているような気がします。


例えば、このカット。


ガンダムオタクから見れば
ビームサーベルを取り出しただけじゃねーか」
というだけの短いカットなのですが、
そのように違和感なく理解できるのはやはり「1stガンダムビームサーベルは背中にあった」
という知識があるからこそです。
かつて背中にあったサーベルが、今回は手首から飛び出すという
典型的なギミックシーンなのですが、
それにしても尺が短いです。
仮に非ガンダムファンの方にもわかりやすくするために尺を伸ばしたとすると
逆シャアのスピード戦闘はありえないわけで、
やはりこの短い秒数に詰め込まれたアクション密度の高さは
多分にシリーズ作品を見てきたファンの理解力に依存している
んだろうなあと。





こちらは、リ・ガズィが追加武装を捨て、分離ギミックを披露するカット。
ここもやはり尺が短いです。
それに加えて、リ・ガズィ武装を捨てざま、すぐに反撃に映っています。


さて、このように時間に比して多くのことをやってるカット(時間あたりで高密度)
のほかに、
同時に多くのことをやってるカット(静止画面で高密度)もあります。
例えばこれ。

ぱっと見で言えば「ロボットが銃を撃っている」だけのカットですが、
に言わせると
モビルスーツが射撃の瞬間に背中のバーニアで衝撃を殺してるんだよ!!」
という要素も見て取れるわけです*5



こちらも何の変哲もないカットですが、
「ザコロボが射撃をしながら突進してきている」という要素のほかに、
「盾で敵の射撃を防いでいる」という要素もあります。


まあ、シーン単位で見ると大したことないような気もしますが、
このような密度感が劇中すべての戦闘シーンにもたらされているというのは
本当にすごいことですし、
上で挙げたサザビーのバーニアを筆頭として
すべてのMSの方向転換、加速、減速、動作のたびに
MSの各部分に律儀なまでのバーニア描写がされており、
こういうバーニア関連の描写の執拗さには狂気すら感じます*6


そういうわけで、誰もが映像の内容を十分に理解できるかどうか?
という基準でいくと
多分にガンオタ(あるいは一定程度の濃いオタク)の理解力に依存している
逆シャアのスピード戦闘ですが、
ガンオタであるという壁を乗り越えてこの映像を見ることができたならば、
これはやはり素晴らしい戦闘シーンとして大変楽しめる事でしょう。


仮に視聴者がかつてのわたくしのような
ガンオタパンピー少年だったとしても、
「なんかよくわかんないけど速くてリアルでかっこいい!」
と問答無用で思わせるパワーがあると思います。

(3)アクションに説得力がある。

ここでいう「説得力」というのは「リアルなSF考証」のことではありません。
細かい点は矛盾があるが、ひとまとまりの作品世界としてはいかにもありそうだと感じさせ、
こまけぇこたぁいいんだよ!!」とかばってあげたい、愛してあげたいと
思わせる力、略して「コマ力(ちから)」です。


なんか富野監督の次回作で出てきそうな用語になってしまいましたが、
逆シャアにはこの「コマ力」が溢れているのです*7
よく言われるように、ガンダム「人型ロボットで戦争なんて非効率的」
というレベルのちょっと考えれば誰でも思いつく矛盾点をいくつも抱えていまず。
必然「コマ力」の発動をつねに求められているわけですが、
逆シャアでの演出・作画面での細かい気配りによる「コマ力」
たんなる言い訳のレベルをはるかに超え、
架空の戦場の空気感(もちろん実際の戦場の空気とは違うでしょうが)
をかもし出すほどの水準をもっていると思うんですよね。


まずはこれ。
逆シャアモビルスーツ戦では
某ゼー○ガンダムみたく「宇宙空間に浮きながら漫然とビームを撃ちあう」
なんてことはありません。
このシーンではリガズィもヤクトドーガも、
きちんと遮蔽物を使っています。


また、遮蔽物から出て身をさらす際には、
無防備にならないようダミーを放出してカバーしてます。



リガズィの射撃に対してわずかに後退して距離を取り、その後前進するサザビー
これも、敵MSに簡単には接近できないという「間合い感」を演出していて、
「いかにもありそう」と思わせてくれるいいシーンです。



後方からの援護射撃をもらいつつ前進するネオジオンモビルスーツ群。
筆者は「MSといえど、援護がなければ前進できない」という描写と受け取りました。



左は、敵に中距離まで詰め寄って目くらましのグレネードを放つケーラのジェガン
真ん中はブライトさんの「斉射、あと3秒!」のカット。
右は長距離移動用の支援ユニットを乗り捨てるギラドーガです。


どれも「宇宙世紀の戦闘のお約束」をさりげなく示してくれていて、
「こう動かなきゃすぐに死ぬんだよ!」というベテラン兵の声が聞こえてきそうな
良カットです。


ジェガンのグレネードは、あくまで目くらましというのがシブくていいですし、
これ以上近づいて接近戦となれば、ちゃんとライフルやサーベルに切り替えているのが
いかにもそれっぽい。
母艦の艦砲射撃のシーンは1stガンダムから連綿と受け継がれてきた
「ブライトさんの命令台詞だけでちゃっかり戦場の空気感を出す」お約束のカットですが、
「長距離ではまず艦砲射撃」という戦場の距離感の醸成に貢献してます。
ゲタを躊躇なく乗り捨てるカットも、
「会敵したらゲタは捨てる」という戦場の不文律を感じさせてシビれます*8

まとめ

はい、こんな感じで殺陣、密度、説得力という
3つのキーワードで逆シャアの戦闘シーンの魅力を言語化しようと
がんばってきたわけですが、皆様に伝わりましたでしょうか?
アニメ様の丸パクリじゃねーかとか言われると
摩擦熱とオーバーロードでアレしてしまうのでやめてください。
既存の逆シャア論壇になかったものが何かしら伝えられれば幸いです。

*1:ガンダムファン以外の方に配慮して、あえてこう書いときます

*2:同時期の、同監督、同じ劇場作品ということで取り上げてみました

*3:シーブック君が射撃戦から一気に間合いを詰めてサーベル・・とかちょっとやってるくらい。

*4:一応、カットの切り替えまでの平均秒数を記録してみたりもしましたが、所詮素人なので他のアニメとの差が分からず、数値的裏付けはアッサリ断念したことを付記。

*5:某フォロワーさんから華麗にパクらせていただきました。ありがとうございました

*6:これもどっかで読んだもののパクリです

*7:ただ、これは1stガンダムからの世界観の積み重ねがあってこそであり、ガンダム信者以外には厳しいとこだと思います。

*8:ゲタを敵にぶつけるカットもあり、そのへんの戦闘術の個人差みたいなのがまた楽しい

ガルガンティアの手描き/CGの融合ってかなりすごかったけどスルーされてません?

いや、気のせいならいいです(弱気)

毎度ワンテンポ、ツーテンポ、
スリーテンポ遅れくらいでお送りする
第三野球部もびっくりの弱小ブログですこんにちは。


今更ガルガンティアの話題です。
ガルガンティアといえば中盤
イデオンイデオンガンを忘れて逃げ出すほどの
グダグダじっくりとした展開を見せてくれましたが、
その鬱屈を晴らしてくれたのがアクション的にもストーリー的にも
激動の展開を見せてくれた12話でした。


原画陣はこんな感じ。

総作画監督佐々木敦子
作画監督:中村悟 堀元宣
作画監督補佐:石塚健 森田史 永島明子 折井一雅 石橋翔祐 千羽由利子 村山章子
原画:三木達也 角田桂一 宮崎瞳 玉城史郎 丹羽信礼 高橋靖子
    万年麻美 長谷川和世 手塚麻美 倉原昌宏 ねこたまや 福井麻記
    白井順 原山智 吉田徹 古川尚哉 新野量太 亀田祥倫
    荒木涼  UEC

ブログ主はエセ作画オタなので深入りは避けますが、
金田系作画の新鋭である亀田祥倫氏が参加されており、
ネット上でもヤマ場の戦闘シーンを担当されたのではないか?
と話題になってました。


アニメなブログ 雨宮哲と亀田祥倫


で、たんに金田系作画が炸裂したというだけならば*1
「たまんね」とか作画オタっぽいことをつぶやきながら
ぼーっと見ていればいいんでしょうけど、
ちょっと気になることがありまして。
何かといえば「作画部分と3DCG部分の融合が素晴らしい」
ってことなんですよ。
融合どころか、完全なる一体化といってもいいレベルに到達しているような。



この回ではビーム攻撃の応酬が続き、
3DCGのメカに手描きのエフェクトが重なるカットがかなり多いです。
まあ、完成品なんだから当たり前なんですけど
3DCGと手描きエフェクトの相互配置が完璧で、
まさに一体となって動いてます。

反動でメカが後ろに大きく後退するタイミングも完璧

3DCG自体もしっかり手描き風のタイミングで動く。指示用の原画があるのかな?


ド級の怠け者のブログ主ですので
こういう手描きエフェクト+3DCGのアニメはあまり見たことがなかったんですが、
少し前だとFate/zeroバーサーカーがかなり話題になってたみたいですね。


あと、金田系というか大張系というか、
フラッシュ的なエフェクトも目立ってました。

で、ここでも同じ話になるんですけど、
これらの伝統的な手描き作画のエフェクトが3DCGに重なって
活用されてることがエポックメイキング*2であることはもちろんですが、
何よりその前後の3DCGとほぼ完全に一体化していることが驚くべきところだと思うんですよね。


上に挙げたエフェクトでいうと、一番左はかなり省略されたものですので
極端なことを言うと当てずっぽでも挿入できそうですが、
中央と右のカットは前後のメカの動きと連動してるので、
原画マンさんがメカを含めて全て原画を描いたのち、
3DCGを原画の通りに配置するとか、少なくとも
原画マンさんと3DCGアニメーターさんが相当な打ち合わせをしないと作れない
のではないでしょうか?



3DCG部門と手描き部門の緊密な連携があったことの根拠はもういっこあって、
それは「メカが3DCGなのにちゃんと金田ポーズしてて笑える」
ってことです。




この回は全体的に遠目でのシーンが多かったのが残念ですが、
手足をピンと伸ばしてアクションするストライカーが笑えます。
ビームを避けるチェインバーのカットでは、3DCGにも関わらず
金田作画のような中抜き感があり、見ようによっては
短距離ワープしてるみたいで笑えますが、一連の流れで見ればかっこいい動きになってます。


これはやはり、原画でメカの動きがすべて指示されていて、
その金田テイストを3DCGアニメータさんが完璧に再現したとしか思えないのですが。
情報がないのでなんとも言えませんが。


とりあえず、まとめの前に、手描きと3DCGの融合の話題で、こんな記事を。
https://www.facebook.com/permalink.php?id=459913164060021&story_fbid=597708533575915

この映像で用いられているのは
3DCGのアニメに2Dのドローイングを重ねるという新技術だそうです。
3DCGでモデルを作り、アニメーション作成。作られたアニメーション映像を
液晶モニターに映し出し、今度は2Dアニメーターがその上に直接、輪郭線等を
描き込むという手の混んだ技法。


手描きとCGを融合させつつ、かっこいい・かわいい・美しい映像を
作ろうという動きは今まさに盛り上がってる感じですね。
ぼくは技術的なことはサッパリですが、
上に挙げたディズニーの例は、CGくささを感じさせないために
2D/3Dの親和度を上げるという
絵柄面の配慮であり、
今回のガルガンティアでの親和度は
2Dと3Dの動作タイミングを完璧にシンクロさせて、
一連の流れをアニメ本来の動きの快感として感じられる方向で
底上げされており、
動き面の配慮といえるんではないかと。*3


どちらの技術も大切とは思いますが、
ぼくは何より単なる技術の進歩だけでなく、
2D・3Dが連携してすごいもん作ろうぜ!という
スタッフさんの気概を画面に感じて楽しくなったのでした。
まあスタッフさんのくだりは腐女子の皆さんも真っ青の
スーパー妄想なんですけど。

おまけ(追記)

さらに妄想を上塗りしますが、
この記事で取り上げたような2D/3Dの融合技術って、
なんか素晴らしい新技術が導入されたというよりは、
2D/3Dが融合してるように見せるための
ごまかし方とかちょろまかし方が既存技術の範囲で発見され始めた
んじゃないかなーなんて思ったんですよね。ほら、アニメの発祥からして錯視なわけですし。


で、この話は根拠も一応ありまして、それが以下の数カットであります。

古めのネタで申し訳ないんですが、ガンダムユニコーン第1話の変型(変身)シーン。
全身のフレームが稼動するカットや、サーベルラックが動く背中のカットまでは
明らかに3DCGが使われているとわかります。

で、ブログ主の腐った目では見分けられないのですが
角を展開したガンダムの顔のアップか、もしくはカメラが引いていく
ガンダムが小さくなっていく)途中のあたりに
3DCGと手描き作画が切り替わる瞬間があるんですよね*4

そして、カメラが完全に引き終わり、ビームサーベルが抜かれたあたりでは、
サーベルのエフェクトや右腕のブラーっぽい描きこみ、全体的な線の引き方からし
(たぶん)手描き作画なんだろうなーとわかります。


このカット、実に上手にごまかしてるなーって感じですよね(上記の分析が当たっているとすれば)。


ボケーッと見てれば、どこが2D/3Dの境い目か、なんてことは感じずに
3DCGでプロポーション完璧な上にサーベルの抜き方は2D的ケレン味があってすごいなー
素直に感動することができるわけです。


けっきょく2D/3Dの融合とかいうお題目は
大層な合成技術とかそういうのじゃなくて、
このような手際のよいごまかし方、ちょろまかし方
素人の知らない間に解決されていくんじゃないかなーと。
もちろん、その作業には膨大な労力がかかるわけで
「ごまかし」という表現は適切ではないかもしれませんが、
大奇術もタネを明かしてみれば「な〜んだ」と言いたくなるように
意外と裏方で行われていることは原始的なのかな〜という妄想が
面白かったので書いてみました。(追記おわり)

*1:それも素晴らしいんですけど

*2:もはや常識になっててアホのブログ主だけが知らない可能性もあります

*3:代わりにメカの質感はCG丸出しという感じです。あえて狙った可能性もありますが

*4:なーんか今更なことを言ってる気もしますが・・

ガルガンティアと似てるアニメについて考えてたら古典的作劇法にたどりついたでござるの巻


おお、珍しく漫画原作とかじゃないアニメを楽しめている!
とかアニメを見ることそれ自体よりも
それを見てるオタクな自分を保守できていることに喜んでいる
ブログ主ですこんにちは。


いや、冗談はさておき、ガルガンティアが普通におもしろいので
色々語りたくなっております。
今回のとっかかりはオトナアニメvol.29です。

オトナアニメ Vol.29 (洋泉社MOOK)

オトナアニメ Vol.29 (洋泉社MOOK)

この本に監督さんのインタビューが載ってるんですが、
ガルガンティアはいろんな人に(いい意味で)
『○○というアニメに似ている』と言われる」
ということをおっしゃってました。
自分が昔見て好きだったアニメを思い出させるような
楽しさが、ガルガンティアにはあると言ってもらえて嬉しいとのこと。


いやこれまさにぼくが感じてたことそのまんまなんで、
誰しも抱く感想は同じだなあと自分の凡夫っぷり
ちょっとイヤになったりしましたが、
この
「いい意味で既存のアニメに似ている」
という視点で考えてみたところ、
エンタメの普遍的楽しみポイント≒古典的作劇手法
みたいなのに行き着いたので書いてみます。
なお、注意していただきたいのは、皆さんが読んでいるのは
具体的にそういう物語(あるいは世界観)づくりが
手法として広く認められているかとかそういう裏取りは
一切してない毎度のクソブログですよという事。
富野監督に言わせたら
このブログを読んではいけません!!って感じだと思います。

既存のアニメと似てるところ=普遍的楽しみ


タイトルのガルガンティアとは巨大な都市船団の名前ですが、
この寄せ集め都市のビジュアルは個人的にキングゲイナーのドームポリスを思い出しました。
ドームポリスの画像がありません、スイマセン
で、こういう寄せ集め都市のカオスなビジュアルってのはスチームパンクに源流があるのかなと。

しつこいですが裏取ってません。
普遍その1:心地よいゴチャ感ですね。


ちなみにガルガンティアのゴチャ感はマニアックに走ることなく、
ストーリーを邪魔しない適度な塩梅だと思います。
例えて言うと「一昔前の日本製RPGくらいの薄いスチーム感*1」。
すいません微妙ですね。



ワイヤーで保持されてる凧型メカなんかはラピュタですかね。
あとはユンボロイドの作業用機能(まだあんまり出てませんが)、
海賊の女王様のユニークユンボロイド(他にも出てくるのか期待)などなど。
こういう近代程度のメカでギミックの楽しさを見せるっていうのも普遍だと思います。

普遍その2。


あとは
サルベージ商売、前文明の残存技術の再利用、水没惑星などのSFギミック。

これらはアニメでも大変広く使われてるので新鮮味は少ないですが、
これら一つ一つをウリにしてるというよりは、やはりいい塩梅の存在感で
ストーリーを邪魔せず、かつそのストーリーが面白いというのが素晴らしいかと。
このギミックが普遍3


そんなSF的ギミックの中でも
異文明の視点によるありふれた常識の再確認、再発見、新鮮な名付け
というネタが使われてますが、これはかなりアニメでは希少じゃないでしょうか。
毎度ぼくの狭い観測範囲での話なのでアレですが。



生物の死骸。特使。などなど翻訳のさいにチェインバーの発する言葉の一つ一つが
いい塩梅に(こればっか)ズレていて滑稽味があります。
ズレとは喜劇の基本。
ガルガンティアを論ずるときによく、漫画「ヒストリエ」の名言
「文化が違う!」が使われてますが、
文化が違う事それ自体よりは、チェインバーさんのズレた翻訳でオトしてる感じですね。
言語に違いがあることをなし崩しに終わらせるのでなく、
あくまでもチェインバーの翻訳を通すことを徹底*2し、
主人公の言語習得までひとつのドラマにしてるのも好感持てます。


この翻訳ネタは笑いだけじゃなく、相手が何を言いたいか推し量っている感覚、
外人さんとのコミュニケーションを疑似的にやってるような楽しみもありますね。

異文化コミュニケーションで普遍4。


しかし、これら普遍的作劇法?をただくっつけただけでは
エンタメは作れない・・と思います。
富野監督(のせいにしているわけではありませんw)がよく言っておられる「今、この作品を作る意味」みたいなやつです。
仮に「当世力(当世風、今風を感じさせる力)」とします。

当世力を担う核

ガルガンティアでいう
当世力を担うポイントというのは、
チェインバースマホではないかと。



オトナアニメのインタビューにて、チェインバースマホをイメージした」
と語られています。


チェインバーと主人公との関係を普遍手法に当てはめると、
人工知能とのバディものみたいな感じかと。
このような人工知能(ロボット)との共存*3
ネタは古典的ではありますが、
チェインバーさんの万能感、スマホに似た感覚は確かに新しいと思います。



チェインバースマホさながらの翻訳、地図、提案などで
主人公を無機質に、しかし献身的にサポートしてくれるさまは、
バディというよりは執事、よきブレイン、忠実な部下みたいな感じですかね。
堂々巡りですが、やはりスマホっぽい」という表現に戻ってしまいます。


既存の相棒ものに登場するAIたちよりも、(舞台が未開文明なのも相まって)
なんでもできる万能AIという印象が強く、
さらにインタビューの言葉を借りるなら、
未開の見知らぬ土地で、唯一頼りにできる存在として、この
スマホ感」が生み出されてるんでしょう。


この感覚は新しいと思います。
ここが新鮮味の源であり、「当世力の核」ではないかと。
スマホがいいとか悪いとかの話でなく、
「今、こういうことってあるよなあ」と思わせることが、
エンタメを新鮮に楽しませる技、なのかもしれません。
あんまり現実とのリンクを露骨に出しすぎると、
エセ社会派アニメ、とかゆって叩かれちゃったりもしますが・・ゴニョゴニョ。


と、いうわけでガルガンティア
普遍的・古典的技法のコンビネーションに今風のスパイスを適度に乗せた、
まことにいい塩梅(今回こればっか)なアニメだという結論に至りました。


・・なんか明日から「塩梅くん」っていうあだ名がクラスに広まりそうで怖いです。

*1:ゼノギアスとか、ワイルドアームズとかバンピートロットとか・・

*2:この意見はツイッターのフォロワーさんから無断拝借しました、スイマセン

*3:海外でいえばロボットとの対決のほうがポピュラーかも

TVジョジョ第2部オープニング映像から作画ネタをほじくり出す


プリキュア3DCG記事のヒットに調子をぶっこいて
TV版ジョジョの第2オープニングの3DCGネタで
またしてもアクセスを稼いでやろうという
実に汚い魂胆で書き始めたこの記事でしたが、
ジョジョの第2OPは
そんなゲロ以下の臭いのする欲望
消し去ってしまうほどの
熱い心意気高いクオリティを備えていました。


スマイルプリキュアのエンディングダンスから作画ネタをほじくり出す - 批評家もまた批評さる
ちゃっかり宣伝
プリキュアのEDダンス変遷の陰にあるアニメ会社のCG表現への飽くなき探求 - GIGAZINE
ちなみによそではこんな記事も出てました。↑


素晴らしい映像作品に心洗われて
賢者モードになったところで、
具体的にどこが熱くてどこが高クオリティなのか語っていきたいと思います。

ほとばしる名作リスペクト

まあこのオープニング映像では実に色んなところでぶったまげたのですが、
座布団から垂直に飛び上がって死にそうなほど驚いたのがこのカット。



はい、プリキュアのときも言ってましたが言わせてください。
「これ、手描きじゃねーのかよ!?」


CGの技術については筆者はサッパリですので
スト4のムービーみたく、CGモデルの輪郭の全体に
手書き風のエフェクトが出るよう設定してあるんだろうなー、
とかなんとか想像するしかありません。
代わりにこのような映像を作ったスタッフさん方の意図について語りたいと思います。


筆者がこの鬼エフェクトの神砂嵐を見て
思い出したのはコンバトラーVの超電磁スピンだったんですが、
まさにこの手描きの効果線風なエフェクトは、
70年代アニメの荒々しいタッチ強烈にリスペクトしたものだろうと思われます。

くっ!画像検索力がたりない!


まあ、そのような70年代アニメをリスペクトして作られた
より以後のアニメでも作画のタッチを生かした演出は連綿と受け継がれてますんで、
そちらへのリスペクトという可能性もあります。


知ってる範囲で並べてみました(小学生)


荒々しい線の表現の他にもリスペクト感がにじみ出てます。
例えばこれ。

静止画だとわけがわかりませんが、柱の男たちの身体が
うねるように画面の中を動き回って度肝を抜くカットです。
これを見て思い出したのはこのへん。

なんだか怪しい画像ですが許してください。
金田伊功氏の作画による、亡霊のオーラがうねりまくるカットです。
これらを似たものとして
「金田作画リスペクト!」とか言うつもりはありませんが*1
極端なディフォルメや物体の変型をいとわずかっこよさを追求する
ジャパニーズ手描きアニメの姿勢へのリスペクトは確実にあると思いますよ。



金田系作画との共通点は物体の変型以外にもいろいろあります。

冒頭に貼ったカーズ様の輝彩滑刀が放つ金田光はわかりやすい意匠ですが、
手描きアニメでも相当浸透して半ば常識化してきたので、特筆するほどではないかもしれません。




左はパンチ、右はキックの瞬間。
動きの合間に大胆なディフォルメや、一見するとつながりの悪そうな絵
一枚ポンと入れておくあたりも金田系っぽいかと。

このスパッタリング風のカットなんかは完全に平面という感じで
3DCGでやる意味あんのかな?(笑)とか言いたくなりますが、
この一瞬があることで見事に迫力が生まれてますので黙っときます。

こっちは本家金田。
人物がムチをふるった瞬間、でっかいエフェクトが一瞬だけ現れます。


さらに細かい話をすると、
画面切り替えの表現にも金田(というか山下将仁氏?)系なエフェクトが。


画面をまっすぐな線で区切らずに、あえてザクザクっと切れ目のようなものを
入れたり、丸っこく変形させたりしてるんですよね。
画面切り替えではないんですけど、こういう描き方は金田(山下)系の
エフェクトでよくあるかなーと。


まとめると、一見してわかる意匠、一瞬だけで目立たないけど
地味に効果を上げてる意匠など、はしばしに金田・山下系のマインドが見て取れる*2
ということだと思います。

理解不能に陥る密度感


ちょっと蛇足ですが、
人物が変形し、手描き風の効果線がつき、CG風の煙エフェクトが加えられ、
ところどころにスパッタリング風の効果が入り・・
トンデモナイ画面の密度になっている三人の柱の男の
必殺技のカット。
これを見て個人的に思い出したのは
森久司氏が手掛けたグレンラガンの合体シーンでした。


まあこちらは金田作画とは違って
共通点もクソもないのですが、グレンラガンの合体シーンでも
珍しい処理の光の嵐や、筆で描いたように荒々しく飛び出る手足、*3
手描きのタッチを残しつつ画面に巻き起こる細い竜巻状のエフェクトなど
新しいアイデアがいくつも渦を巻いていて、
「一体何が起こってるんだ!?」と理解不能に陥らせる密度感
ジョジョの第2OPと共通してるなーと思うのですよね。


そして、この密度感から溢れる「すげーもん見せてやるぜ!」という情熱が、
筆者の浅はかな欲望を完全にぶちのめしたのでした。

お遊びまで含めてハイテンション

おまけとして、こんな検証画像もありました。
ジョジョOPコマ送りして見たらスタッフ結構遊んでた
とくに80年代のアニメに多いイメージなんですけど、
コマ送りしないとわからないくらいの一瞬のカットに
スタッフさんの隠しメッセージとかぼやきが書かれてるアレが
ジョジョにもあったわけです。

拡大してよーく見てみてください


最近のアニメはぜんぜん見てない怠惰な筆者ですので
今でもこういうお遊び文化が生き残ってるかはわかりませんが、
もうかなり珍しいのではないでしょうか。
このようなお遊びからも、情熱を注ぎまくって楽しみながら作ってる感じが
伝わり、実にアツいです。燃え尽きそうです。

まとめ

当初は3DCGと手描きアニメを比較して理屈をこねようとか考えていましたが、
そういう低次元な考えをぶっ飛ばすほどに
ジョジョの第2オープニング映像はエンタメ性に溢れてました。


ただ、このオープニングでやっていることは
すべて手描きでも代替できてしまうんじゃないか?とかいうことも気にかかります。
3DCGの技術力を追及して海外と競り合って・・というタテマエもありますが、
やはり「3DCGでこそできて、手描きでは決してできなくて、かつ超カッコイイ映像」が出てこないと
視聴者としてはもろ手を挙げて喜べないかなー・・と。


実はそういうシーンがジョジョのオープニングにすでに存在していて
筆者が気づいてないだけかもしれないのですが。
とりあえず、柱の男の必殺技ラッシュのエフェクト重ねまくった画面密度と、
手描きアニメのハーモニー効果なんかとはまた違ったディテールをまといながら
絵柄、服の細部、デッサン的タッチ等々を崩すことなく動き回るジョセフとシーザーなんかは
「3DCGでこそできる(手描きだと不可能じゃないけど苦しい)映像」
なのかなーと思いました。
おわり。

*1:前述の通り、リスペクトが再リスペクトを次々生んでるのでそういう言い方はもうできないのかなーと

*2:スタッフさんが意識してたかはわかりません。笑

*3:この表現は昔とある作画オタク様が使っておられたもののパクリです

エヴァQの重箱の隅をつついて楽しさを見出すポジティブキャンペーン

はじめに。
本記事はエヴァQの強烈なネタバレを含みますのでご注意ください。














さて、世間では
エヴァだとか新劇場版ナディアだとか
アゴだとか散々なことを言われているエヴァQですが、
筆者もご多分に漏れず
微妙な表情で劇場から出てきた一人です。

入る劇場を間違えたかと思ったよママン


「破」とは打って変わっての鬱展開と作劇上の矛盾の嵐
巷ではなんとか説明をつけようと有志の方々ががんばっていらっしゃいます。


しかし皆さん。庵野カントクのこの発言を思い出してください。

神崎のナナメ読み: 庵野秀明 in トップランナー【3】
庵野「当時は、そうじゃないですかね。僕自身、哲学を知らない
んですよ。あまり哲学的なことはやっていない、今までも。
エヴァはそういう風に云われてますけれど、
あれは哲学じゃなく"衒学的(げんがくてき)"なんですね

庵野「よく知らないけれど、こういう言葉を使っていれば
賢そうに見えると云う・・・(観客の薄ら笑い)。
それがエヴァですね。(後略)

ぼくはこの発言を思い出すたびに
はげしく脱力します。
とにかく、庵野カントクからこのようなお達しが出てるわけですから
エヴァに関して、設定やキャラの発言の細部を
検証することはあまり意味がないと言わざるを得ません。


しかし、今回Qに関して大騒ぎになっているのにはもうちょっと
別な理由があって、それは
「何か理由があるのではないかと思わせるほど本筋がつまんない」
ってこともあると思うんですよね。

エンタメ要素にキレがない

今まで
実写風のヒューマンドラマとか、
東宝怪獣に対して超科学作戦で人類が迎え撃つシーンのアニメ版とか
文句なしにかっこいいメカとかわいいキャラ
あと
ウルトラマンのパクリとかで
本筋を手堅く固めつつ、サイドメニューとして謎要素や
不可解な設定が用意されてきたのだと思いますが、
今回の本筋要素は、
完成度80%で現れたような微妙感をかもし出しています。
腐ってやがるとは言いませんが、
皮だけ生成されなかったような違和感。

皮がないと痛いんだよー


これはまったくの推測ですが、
東日本大震災の後、脚本を書きなおした」
という噂が流れてきていることから考えて、
「破」以上に遅れた段階でストーリーを作り直した*1ために
制作スケジュールがひっ迫したのではないでしょうか・・?
その結果、
メカデザイン、戦闘アイデア、演出のそれぞれを
練りこむ時間も十分とれず、それがこの本筋の「微妙感」
につながってるのではないかと・・。

やっとつっつく

はい、いつ重箱の隅をつつくんだよ
という感じですね。ここからつっついていきます。


エンタメ要素が微妙なあまり、「明るいイデオン
ならぬ「明るいエヴァQ」予想外に語呂がいい
としてキャンペーンを打たないとやってられませんのでがんばります。


まずヴンダーです。
この名前、どうにかならなかったのでしょうか。
衝撃のあまり、「ヴィンダー」とか「ヴァンダー」というように
多少なりともかっこいい響きに脳内補完するファンが続出しているほどです。
デザイン面でも、ダサカッコイイメカが好きな筆者も
「それはねーだろ!」と椅子から飛び上がって空母に着艦しそう
になった強烈なデザインです。
3DCGの強みを生かして、アニメーターさんにお願いしたら
死人が一人や二人じゃすまないディテールを誇っていますが、
全体的にみるとゴテゴテしててイマイチ。ただ、重箱の隅としては
吹っ切れたかのようにそびえ立つ三基のパラボラアンテナがポイント高い*2です。
この異次元感というかアンバランス感は
昭和後期ウルトラメカを思い出させます。

まあ自分で考えたんじゃなくて
庵野カントクが最近タロウの素晴らしさについて語ってたことが多かったからなんですが*3
「今回は後期ウルトラデザインで行こうぜ!」
って話があったんじゃないかなあ。
不必要なまでのボリューム感、ゴージャス感が近いように思えます。


ほら、だんだんエヴァQメカに違和感がなくなってきたでしょ?



ヴンダーの後部先端には、グレーと黄色のカラーリングの
摩訶不思議なパーツがくっついていますが、
これはウルトラメカか、マイティジャック号を模したようにも見えてちょっと笑えます。


そして新エヴァの数々。
とくに8号機の頭部に顕著ですが、ここでも
ZATラインが出てます。
庵野カントクが言うところの「甘美な曲線(?)」(記憶があいまいです、すいません)
というやつです。
エヴァMark.9のマント状ブースターの独特な形状もこれだと思います。
あとエヴァ13号機。
「パーツを二倍にすればいいってもんじゃ(略」とぶつぶつ言いたくなりますが、
このへんの「パーツが二倍だからパワーも二倍」的な安易さも
古き良き特撮をオマージュしたのでは・・って、すいません、
強引すぎましたね。

さらに細かいネタ

細かいネタですが、ヴンダー浮上時の戦闘で出た
「飽和攻撃」という単語はヤマト完結編にもあるようです。
オマージュかな?


リツコさんがミサトさんに危機的状況についてまくし立てる
のはもはやお家芸と化してますが、
今回「さらに」「おまけに」という既知のテクニックに加えて
「とどめに」という新技が出てきて笑いました。


ナディアネタについては、
公開前に予告映像に映ったエクセリヲン風の宇宙船を見て、
「今回はナディアネタが来るんじゃねーか?」とか笑いながら
語っていた頃が懐かしいです。
まさか巨大戦艦の登場とBGMの再使用とは。
剛速球の直球ど真ん中で、受け取る側としては
吹っ飛んだ上にフェンスにめり込みそうです。


あと、冒頭6分の戦闘は素晴らしかったですね。
劇場版はTVオンエア版と微妙に違いがありますし、
大音響であのシーンを楽しめるというのは価値のあることだと思います。
まさかあのシーンが映画の中で最高のクライマックス
だとは思いませんでしたが。

まとめ

まあそういうわけで
明るいエヴァQキャンペーンを試しに始めてみたわけですが、
一人でやってるとすごくつらいです。オラに元気を分けてくれ!って感じです。


つらく険しい道のりですが、次回作の公開まで
明るいエヴァQキャンペーンは細々と続けたいと思いますのでよろしくお願いします。

*1:「破」の記録全集にも、制作がかなり進んでから方向転換したことが書いてあります

*2:まあイージス艦とか現用兵器にもゴテゴテとパラボラアンテナがついてたりしますけど・・でもアニメメカでこのデザインはやっぱり異形ですよ!

*3:特撮博物館内の展示、円谷特撮の企画DVDコメントなど各所で語られてたように思います

板野一郎氏の1stガンダムについての過去の発言をちょっとだけサルベージ。

古い荷物をゴソゴソしていたらVHSが発掘されたので
サルベージしてみました。


05年の8月にNHKBSで放送された、
アニメ夜話の特別企画「まるごとガンダム」です。


で、個人的にと崇めている板野一郎氏が
出演されてたので、面白そうな発言をピックアップして文字起こししてみました。
ほんとは動画のほうがわかりやすいんでしょうけど、
NHKの動画を上げると夜中に見知らぬ方の訪問を受けそう
なのでやめときます*1

ファーストガンダム放送当時の様子について

板野 富野さんが、スポンサーとか、色んなところから
電話で怒られてるんですよ。絵本が売れないと。
売れっこないんですよ、強いぞガンダム、ぼくらのガンダム
がんばれガンダムって、3〜5歳用の絵本が・・
岡田 絵本、買いましたよ、シャアのザクが遊園地を襲ってくるやつでしょ(笑)。 
板野 あんなもの、オンエアを見てる人が、リアリティを追及して、
かっこいいな、この戦争アニメーション(略)と思ってるのに、
おもちゃと本が、(略)視聴者と全然ターゲットが合ってなくて、
ピントが合ってなくて、大学のファンクラブとかが、それを
泣きながら買ってくれるんですよね。
おもちゃも本も。ガンダムを終わらせてたまるかって、
応援してくれるんですけど、やっぱり力及ばずっていうか。 
江川 富野さん的には、どこまでちっちゃい子をターゲットにしてたんですか。
板野 してない、全くしてない。(一同笑) 
江川 売れるわけないじゃないですか(笑)。
板野 それで、マスターベーションだとか、何様だとか、
子供のアニメーションなのに、ふざけんなとか
(富野監督が)怒られてたんですよ。
それで、(監督が)どんどんハゲていくんですよね(笑)。

スポンサー側の要求について

板野 最初、4話ぐらい(敵役が)ザクなんですよ。 
江川 ずーっとザクですよね。 
板野 それが、スポンサーが、おもちゃが売れないのは、
やられメカが毎回同じだからだと。ザクってのは弱いぞと。弱すぎると。
それで、ガンダムが毎回違うやられメカをやっつけるから、
強く見えて子供におもちゃが売れるんだと。
それで、わけのわかんないの(MS)が出てくる。(一同笑) 

自らが作画したエルメスとの戦いのシーンについて

板野 工夫っていうか、富野さんの演出があって、
安彦さんの芝居のうまさがあって、その中で・・
ニュータイプだから、先読みして、そういったところを表すために、
わざとスローモーションでこう、銃身が少しずれて、
ビットがスローモーションになって、パッ、パッ、って行ったところに、
先にビームが行って、ビットが後から来て、爆発する。 
江川 そこ、秀逸でしたよね。 




いかがでしょうか。
まあ、1stガンダムの逸話や伝説はいまや色々な書籍で語られていて、
あげくのはてにガンダム漫画に若き日の板野さんが登場しちゃったりして、
当時の新人アニメーターのちょっとしたエピソードまで引っ張り出すとは
大人のすることか!って言いたくなる でもそれを大喜びで読んでたりする
域に達してるので、
ここで板野氏が語られたこともあんま新鮮味がないかなーとは思うんですけど、
現場の方も当時から高年齢のファンの動きを知っておられたってこととか、
スポンサーと折衝をする富野監督の姿とか、
板野氏自らがファーストガンダムでの担当箇所について語られることは珍しいんじゃないかとか、
まあそれなりに面白い内容だと思いますよ。


あとなによりハゲ発言。
富野監督の頭頂部の原因はこのときのストレスだったのかっ・・!
いや、番組中で板野氏が「それが原因かどうかはわかりません(笑)」
って言ってたので
本気にしてリツイートとかしないでくださいね。

*1:まあこの文字起こしも問題ありそうなんですけど。